東海大学平和戦略国際研究所
内容紹介
パワーシフトとグローバルシフトによって生み出された科学技術に裏打ちされた精密兵器のグローバル化と戦争の領域拡大は、国際政治にどのような変動を起こすのか。国際政治・安全保障の専門家9人が試論する。民間企業、非政府組織、軍部、市民社会を巻き込む安全保障の脅威に、いかに挑むべきなのか。
藤巻 裕之 東海大学政治経済学部政治学科教授。1969年生まれ。Webster University(米国)国際関係論修士号取得、東海大学政治学研究科博士課程後期修了。IMEMO(ロシア科学アカデミー、国際経済国際関係研究所)にて研究、東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程専任講師、東海大学平和戦略国際研究所次長などを経て、2016年より現職。主著に『東アジアに「共同体」はできるか』(共著、社会評論社)、『アメリカがつくる国際秩序』(共著、ミネルヴァ書房)などがある。
ロシア・クライナ戦争を専門家が詳細に分析
渡部悦和元陸将、井上武元陸将、佐々木孝博元海将補の3人が徹底討論。日本が教訓とすべきことを明確に提言する。
著者紹介
渡部悦和(わたなべ よしかず)1955年愛媛県生まれ。元陸将。1978年東京大学卒。陸上自衛隊入隊後、外務省出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学等を経て、東部方面総監。2013年退職。著書に『米中戦争』(講談社現代新書)等。
井上武(いのうえ たける)1954年徳島県生まれ。元陸将。1978年防衛大学校卒(22期)。陸上自衛隊入隊後、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、ドイツ防衛駐在官、陸上自衛隊富士学校長等を経て、2013年退職。陸上自衛隊最新兵器について『月刊JADI』(日本防衛装備工業会)等の雑誌に数多く投稿。
佐々木孝博(ささき たかひろ)1962年東京都生まれ。元海将補。1986年防衛大学校卒(30期)、博士(学術)。海上自衛隊入隊後、オーストラリア海軍大学留学、在ロシア防衛駐在官等を経て、下関基地隊司令。2018年退職。著書に『近未来戦の核心 サイバー戦』(育鵬社)等。
知らないうちに多大な被害を受け、攻撃国に大きな利益をもたらす「サイバー戦」の根本思想と実践法とは?大国ロシアをベースに「サイバー戦」の全貌を元在ロシア防衛駐在官がひもとく!2014年のウクライナ危機で、ロシアはわずかな抵抗を受けたのみで、簡単にクリミア半島を併合してしまったことを覚えているだろうか? 「サイバー戦」の例のひとつである。
2007年にロシアによるエストニアへの大規模なサイバー攻撃事案が起き、2008年にはグルジア紛争が生起するなどの情勢を受け、日露防衛当局間の関係は厳しい状態を迎えることとなった。必然的にロシアとの安全保障問題の最前線で勤務していた筆者にとっては、これらの問題でのロシアの真意がどこにあるのかとの疑問が生じ、ロシア研究を本格的に実施するきっかけとなった。そして、本書執筆に至ったということである。本書では、情報空間(サイバー空間)におけるロシアの安全保障問題(とくにサイバー戦)について、西側の標準的な考え方や慣習に左右されず、ロシアの為政者がどのように考えているのかに軸足を置き考察してきた。……あとがきより
佐々木孝博 富士通システム統合研究所安全保障研究所主席研究員、広島大学大学院人間社会科学研究科客員教授、東海大学平和戦略国際研究所客員教授、明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員、安全保障懇話会研究員。1986(昭和61)年、防衛大学校(電気工学)卒業後、海上自衛隊に入隊。その後、米海軍第3艦隊連絡官、オーストラリア海軍幕僚大学留学、護衛艦ゆうべつ艦長、在ロシア防衛駐在官、防衛省情報本部分析部課長、第8護衛隊司令、統合幕僚監部サイバー企画調整官、自衛隊広島地方協力本部長、指揮通信開発隊司令、下関基地隊司令を経て、2018(平成30)年防衛省退職(海将補)。在ロシア防衛駐在官として外交・安全保障の最前線での勤務に携わった経験や、初代統合幕僚監部サイバー企画調整官として防衛省のサイバー攻撃対処指針の制定・サイバー防衛隊の創設に携わった勤務経験などから、ロシアの軍事・安全保障、情報戦、サイバーセキュリティ、インテリジェンス問題などを専門としている。また、そのようなバックグラウンドから、フィールドワークと学術的見地の融合を重視した研究を行っている。
本書執筆の動機は、核兵器禁止条約を称賛する論調が多い中、その正確な姿を伝えることにある。「唯一の戦争被爆国である日本が、なぜ禁止条約に入らないのか。むしろ、被爆経験を有する日本こそが世界に先駆けて入るべきだ。」とする義憤にも似た国民感情に答えるものである。核抑止を否定する禁止条約に入ることは、日米同盟のコアとなる核抑止(核の傘)から離脱し、露・中・北朝鮮に囲まれた東アジアの厳しい安全保障環境の中で、日本が、即「丸腰」になることを意味する。ウクライナ侵攻で顕在化した核の脅威の中、禁止条約は余りにも現実から遊離しており、政策オプションではあり得ない。
また、「禁止」と「廃絶」は別物で、禁止しても核兵器国が乗ってこなければ廃絶はできない。本書は、禁止条約と安全保障問題の関係を論じ、日本国民が、抑止の考え方、核抑止の意味を真剣に考え、健全な核廃絶の議論を起するための一助になるものである。
佐野 利男
1952年生まれ。東京大学法学部卒、米スワスモア大学留学。77年外務省入省、主にエネルギー、経済協力、軍縮などを担当し、国際エネルギー機関、ニューヨーク国連代表部などに勤務。大臣官房総括審議官、軍縮・不拡散科学部長、デンマーク大使、ジュネーブ軍縮大使を歴任。2017年から原子力委員。著書に「女神フライアが愛した国―偉大な小国デンマークが示す未来」(東海大学出版部)。